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すると足を踏み出した彼は突然立ち止まり、私の手を握りしめ方向転換した。
「やっぱ変更」
「え?」
「俺の家、行きましょう」
「い……行きたい!」
勢いよく同意すると、彼はふっと笑みをこぼした。
「あ、でもご飯……」
「久し振りに樹さんの手料理が食べたい」
「……」
首を傾げ、私の顔を覗き込む。
霧島くん的には全く意識していないのだろうけど、その仕草はあまりにも破壊力抜群で私に断る選択はなかった。
「じゃあ……スーパー寄ってく?」
「ん。決まりですね」
霧島くんの手の温もり。
私を見つめるその眼差し。
電話で声を聞くだけでは伝わらないものが、今私のすぐ傍にある。
それは決して当たり前のことではないのだと、離れたことで改めて気付くことが出来た。
会った瞬間に、帰りたくないって思ってしまう。
離れたくないって、思ってしまう。
やっぱり距離が近い方が、断然いい。
「本当は家連れて行くつもりなかったんですけど」
「え?どうして……」
「だって樹さん、今日は仕事で来てるから俺の家には泊まれないじゃないですか」
「……」
わかりづらい言い回しだけれど、霧島くんの言いたいことは大体わかるようになっていた。
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