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幼い頃からの親友が、結婚した。
教会の鐘が盛大に鳴り響き、純白のウェディングドレスに身を包んだ彼女は、誰よりも眩しい笑顔を見せていた。
彼女は高三の春、通学で利用していたバスの中で知り合った年上の男に恋をした。
最初は完全な片想いだった。
それでも彼女は諦めず、見事その想いが通じて交際に発展しその後、結婚に至ることになった。
「今の私の幸せがあるのは、冬汰のおかげだよ」
「俺は何もしてないだろ。お前がアイツを諦めなかっただけじゃん」
「冬汰がいたから私、棗くんを諦めないでいられたんだよ。いつも冬汰が、背中を押してくれたから」
「……ただ単に、お前がしつこかっただけだろ」
「何それ、ひどくない?」
俺はいつだって、彼女の幸せを願っていた。
彼女が幸せそうに笑う姿を見るのが、好きだった。
どんなときでも真っ直ぐで純粋な彼女に恋をしていた。
だけど、自分の想いを彼女に伝えることはしなかった。
その笑顔を曇らせたくなかったから。
彼女の幸せを奪いたくなかったから。
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