氷の女の意外な一面

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「だから、そういう冬汰の良いところを生かすには最適な仕事だと思ったの」 「……俺は全くそう思わないけど」 「でも絶対やりがいのある仕事だと思うよ!特に今やりたいことがないなら、候補に入れてみるのもいいんじゃない?」 「余計なお世話だよ」 と、ひねくれた返しをしながらも、何故か彼女の言葉が俺の頭からしばらく離れてくれなかった。 きっと話を聞いた時点で、既に俺の中で勝手にブライダル系の仕事が候補入りしてしまっていたのだろう。 結局俺はホテル業界の道へ進んだ。 彼女の言葉だけを糧にして、就職先を決めたわけではない。 もちろん俺なりに熟考した結果だ。 ただ、本気で将来のことを考えていく中で、その業界よりも心が傾く道がなかったともいえる。 それでも、彼女の言葉がキッカケになったことは確かだった。 就職して最初に配属されたのは、地元でもある東京だった。 配属先はブライダル部門ではなかった。 でも、そのことに一切の不満はなかった。 せっかく仕事をするなら、一つの部門にとどまらず多くの経験をしてみたいと思っていたから。 異動はまだ数年先だろう。 そう思っていたのも束の間、早々と俺は二年目で北海道の札幌へと異動が命じられた。 配属先は、第一希望のブライダル部門だった。
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