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札幌は、東京生まれの自分にとっては完全に無縁の地だ。
寒いのが苦手な俺は、北海道に住みたいと思ったことさえ正直一度もない。
転勤があることは最初からわかっていたし、異動を断れないことは理解しているから不満は口にしなかったけれど、実際は札幌に行きたくなかった。
その最たる理由は、純と離れてしまうことだった。
彼女は結婚して他の男のものになってしまったけれど、俺と彼女の友情が変わることはなかった。
互いに仕事をしながらも、星野を交えて三人で会うことはよくあった。
その生活を、こんなにも早く手放すことになるとは、正直想像出来ていなかった。
「え!冬汰、札幌に異動になったの!?」
「マジでー?いいじゃん札幌!北海道は美味しいもの多いし」
「俺、寒いの苦手」
「冬汰が近くにいなくなるなんて……寂しくなるね」
俺と彼女は小学生の頃からずっと一緒に過ごしてきた。
どの年代に戻っても、彼女との思い出が溢れている。
どちらかが遠くに行ってしまうのは、初めてのことだった。
寂しい。
そんな一言では表せないような感覚が、俺の中にはあった。
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