彼女の視線の先

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付き合っていた頃は気付かなかったけれど、彼女は俺が思っていたよりも賢かった。 要点をまとめて説明してくれるため、打ち合わせは順調に進んだ。 仕事をしている彼女は、高校生だった頃よりも魅力的に感じる。 このまま会う頻度が増えていけば、俺は彼女に夢中になってしまうだろう。 ……いや、もう、手遅れかもしれない。 打ち合わせが終わり、帰ろうとする彼女を引き止めた。 どうしても、話がしたかった。 「仕事の話以外は、聞くつもりありません」 彼女は俺を拒絶したけれど、俺は構わず言葉を続けた。 「何も言わずに樹の前からいなくなって、ごめん。本当は、あんな別れ方したくなかった。……樹と別れるつもりも、なかったよ」 あんな過ちを犯していなければ、俺は今も樹の傍にいられただろうか。 「誤解しているようだから言うけど、俺は樹のこと、本気で愛してたよ」 「嘘言わないで!」 彼女は抑えていた憎しみの感情を俺にぶつけた。 こんなにも怒りを露にする樹を見るのは、初めてだった。 「いい加減にしてよ!今さらそんなこと言われても困るの!言い訳なんか聞きたくない!」
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