彼女の視線の先

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「このままだとアイツ一生独身なんじゃないかな。まぁ、そう言う俺もいまだに独身なんですけどね。でも樹の場合は、ちょっと気を付けた方がいいっすよね」 「何が?」 「だってアイツ、男の免疫なさ過ぎだから。変な男に引っかかって捨てられるとかありえそうじゃないっすか?」 本気で愛していたとはいえ、樹を傷つけてしまった過去があるだけに、何も言えなかった。 「樹の周りに誰かいい男いないんですかね」 そう言われて頭に浮かんだのは、楢崎の部下の霧島くんの姿だった。 彼女の周りにいるいい男で独身といえば、彼ぐらいしか思い浮かばない。 彼は多少性格がきつい部分はあるけれど、外見は女性に好まれる顔立ちだ。 それでも、樹と彼が男女の関係になることは絶対にないだろうと思った。 樹はきっと、彼のような男を好きにはならないだろう。 「……なかなかいないんじゃないかな」 「なら先輩、樹に誰かいい男紹介してやって下さいよー」 「もしいい男がいたらね」 なんて適当に答えたけれど、当然彼女に男を紹介する気など一切なかった。
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