彼女の視線の先

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次に樹に会えたのは、その数日後だった。 この日の打ち合わせは、俺の希望もありプランナーの参加も決まっていた。 欲を言えば彼女と二人きりの方が断然良いけれど、仕事のためには致し方ない。 ベテランのプランナーが来るのだろうと勝手に予想していた俺の前に現れたのは、霧島くんだった。 「朝日さん、今日はよろしくお願いします。楢崎主任と話し合って、今回は霧島くんに参加してもらうことになりました」 そう言った彼女を、隣で見つめる彼の視線が気になった。 「急に予定が変更になってしまって申し訳ない。霧島くんに会うのは久し振りだね。今日は来てくれてありがとう」 「お久し振りです。僕で良ければ、どんなことでも聞いて下さい」 笑顔で俺に挨拶する彼を、隣で見つめる彼女の視線が気になった。 「何ですか、永里さん」 「え?」 「視線が痛いんですけど」 「あ……ごめん、つい」 目の前にいる俺に構わず、言葉を交わす二人。 「……」 この胸に広がる嫌なざわつきは何だろう。
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