彼女の視線の先

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次に会ったのは、それから数か月後。 また飲みの場だった。 その日俺は成り行きで、楢崎の職場の飲み会に参加することになってしまった。 いつものように楢崎と二人で飲みに行くと思っていたのに、いざ店へ向かうと、テーブル席には楢崎を囲むように座る女性の集団がいたのだ。 「朝日、悪い。今日うちの部署の飲み会に参加してもらってもいいかな」 「別にいいけど……」 何でこんなことになっているのかと聞く前に、俺は女性の集団に早くも捕まってしまった。 「もう、主任にこんなイケメンなお友達がいるなんて知りませんでした!」 「私、ミナです」 「チカでーす」 「アヤでーす」 「アユミです」 「……初めまして。朝日です」 ここはキャバクラなのかと一瞬見間違えてしまうほど、女子率が高かった。 楢崎はいつもこんな環境で働いているのかと思うと、少し不憫に思う。 「朝日さんって、ご結婚されてるんですかぁ?」 「え?あぁ、してるよ」 「何だもう既に人のモノかぁ」 あからさまにがっかりする彼女たちを見ながら苦笑していると、一番端の席に座る男性に視線が移った。 「あ、もしかして君、霧島くん?」 「……どうも」 相変わらず、愛想は皆無だ。
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