彼女の視線の先

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「朝日さん、今日これからスカイプレミアの永里さんと打ち合わせですよね。僕も同席します」 「いや、美濃はいいよ。俺一人で大丈夫だから」 「え?でも……」 「今回は簡単な打ち合わせになりそうだから」 無理やり二人きりの空間を作ろうとしていることに気付かれたのだろうか。 美濃は含み笑いを浮かべながら、打ち合わせのセッティングを手伝い始めた。 「朝日さん、よっぽど彼女のこと気になるんですね」 「……そうだね。気になるよ」 「うわ、認めちゃうんですね。まぁでも、朝日さんに言い寄られて拒絶する女性はいないですよ」 「それはどうかな」 もちろん、受け入れてもらえるとは思っていない。 過去に俺が彼女をひどく傷つけた事実は、一生変えることは出来ない。 こうやって彼女の前に姿を現すことさえ、彼女にとっては苦痛でしかないのかもしれない。 それでも、あの頃の自分の気持ちだけはどうしても伝えたかった。 ……今さら遅いとわかっていても。
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