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「だから、ある意味朝日が羨ましいよ。離婚してまで手に入れたい幸せを見つけることが出来たんだから」
楢崎は皮肉を言っているわけではなく、本心からそう思っていることが伝わってきた。
「俺からすれば、それだけで朝日は幸せ者だよ」
客観的に見て、俺と楢崎ならどちらが幸せに見えるのだろう。
運命の相手に未だ出会えていない男と、運命の相手を一度自ら手放してしまった男。
「……そうかもしれないな」
樹の返答次第で、俺の結末は大きく変わる。
過去を悔やむ愚か者で終わるのか、それとも虚しさなんて感じなくなるほどの幸福を手にいれることが出来るのか。
「とりあえず、今日は飲もう」
「あぁ。そうだな」
結末がどうなるのかなんて、考えるのはやめた。
俺がどれだけ考えたところできっと答えは出ない。
……答えを知っているのは、樹だけなのだから。
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