世界中の誰よりも

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冷たい風。 懐かしい海の匂い。 地元に帰ってきたのは、いつ以来だろう。 「へぇ。ここが樹さんが生まれ育った町なんですね」 「……」 今回は、一人で帰ってきたわけではない。 私の隣には、霧島くんがいる。 子供の頃、当たり前のように歩いていた通学路を、今こうして霧島くんと一緒に歩いていることが不思議で仕方ない。 「……ねぇ、やっぱり今日は私の実家に寄るのやめる?」 「は?ここまで来てやめるとかバカじゃないですか」 「だって急過ぎて心の準備が……」 「別に急じゃないですよね。ちゃんと一日猶予あげたじゃないですか」 「そうだけど……」 「ほら、早く案内して下さい」 今私たちは、私の実家がある苫小牧市に来ている。 そもそも、ずっと実家に帰省していなかった私が、何故今回帰ることになったのか。 それは、昨日の出来事に遡る。 昨夜、私は霧島くんにプロポーズされたのだ。
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