275人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
冷たい風。
懐かしい海の匂い。
地元に帰ってきたのは、いつ以来だろう。
「へぇ。ここが樹さんが生まれ育った町なんですね」
「……」
今回は、一人で帰ってきたわけではない。
私の隣には、霧島くんがいる。
子供の頃、当たり前のように歩いていた通学路を、今こうして霧島くんと一緒に歩いていることが不思議で仕方ない。
「……ねぇ、やっぱり今日は私の実家に寄るのやめる?」
「は?ここまで来てやめるとかバカじゃないですか」
「だって急過ぎて心の準備が……」
「別に急じゃないですよね。ちゃんと一日猶予あげたじゃないですか」
「そうだけど……」
「ほら、早く案内して下さい」
今私たちは、私の実家がある苫小牧市に来ている。
そもそも、ずっと実家に帰省していなかった私が、何故今回帰ることになったのか。
それは、昨日の出来事に遡る。
昨夜、私は霧島くんにプロポーズされたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!