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和室の襖を開き、母が敷いた布団に父を寝かせた。
恥ずかしいと思う反面、父がこんなに酔うまで飲んでしまったことには、何か理由がある気がしてならなかった。
「きっとお父さん、寂しいのよ」
「え?」
「娘が嫁ぐことが、嬉しいと同じくらい寂しいんじゃない?特に樹は、子供の頃はずっとお父さんっ子だったでしょ」
「……」
そうだ。
子供の頃は、厳しいことを言う母よりも、優しく私を甘やかしてくれる父の方が好きだった。
父がどこかへ出掛けるときは、私も一緒に連れて行ってもらったし、父の元気がない様子のときは、私も心配で仕方なかった。
父の中では、あの頃の記憶が鮮明に残っているのだろうか。
「霧島さん、飛行機の時間は大丈夫なの?そろそろ行かないと乗り遅れちゃうんじゃない?」
「あぁ、そうですね。そろそろ出ないとまずいかもしれないです」
時間の流れはあっという間だ。
窓の外を見ると、既に日が暮れている。
すぐに空港へ向かわなければ、予約している便に乗り遅れてしまうかもしれない。
霧島くんが帰る準備をする。
この時間が、私は一番嫌いだ。
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