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でも、今日帰ってきて思った。
父も母も、確実に年を重ねている。
今は元気だけれど、来年も同じように元気でいてくれる保証なんてどこにもないのだ。
なぜ私は、そんな当たり前のことを考えようともしなかったのだろう。
「……でも、なるべく帰ってくるようにするから」
結婚して東京に住み始めたら、それこそ実家に帰る機会は今よりも減ってしまう。
だから、その前に。
父と母と過ごす時間も、大切にしたいと思った。
「入籍の日取りとか、いろいろ決まったらすぐに報告しなさいよ」
「うん、わかった」
「じゃあ、今日は本当にありがとうございました。お邪魔しました」
家を出て歩き始めると同時に、自然と深い息を吐いていた。
結婚の報告が無事に終わって良かった。
それにしても霧島くんはすごい。
最初から最後まで、緊張している素振りは一切なかった。
「ごめんね。疲れたでしょ?」
「俺よりも、樹さんの方が疲れたんじゃないですか。すごいほっとした顔してますよ」
歩きながら、どちらからともなく指が絡まり手を繋ぐ。
霧島くんの体温は、無条件に私を安心させてくれるんだ。
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