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東京と札幌の遠距離恋愛を始めてから、二年の月日が経過していた。
二年も経てば、すぐには会えない距離に慣れるだろうと思っていた。
でも現実は、そんな甘いものではない。
電話で声を聞けば、すぐに会いたくなってしまう。
仕事で落ち込むことがあったとき、顔を見て話を聞いてほしいと思ったことは何度あっただろう。
もっとそばにいたい。
そう思ってしまうのは、もう仕方のないことだった。
そしてそう思っているのは、きっと私だけではない。
霧島くんも同じ気持ちだということは、普段電話で交わす言葉や、久し振りに会えたときの彼の表情からちゃんと私にも伝わっていた。
霧島くんはきっとあと数年は、異動はないだろう。
それなら自分が異動願いを出せばいい。
私は密かに、前島室長に東京への異動を希望することを打ち明けた。
「東京に異動?まぁ、お前もそろそろ異動の時期だし……希望は通りやすいと思うけどな」
「本当ですか?じゃあ室長の方から、人事に掛け合って頂けますか?」
「それはいいけど、もしかして永里、霧島と結婚するのか?」
「け、結婚!?」
付き合って二年。
結婚の話が出たことは、悲しいことに一度もない。
だから昨日までは、霧島くんにプロポーズされるだなんて思いもしなかったし、特別期待もしていなかった。
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