567人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
だからといって、あまり長い時間上にいるのも、後から詮索される気がする。
それにここは、霧島くんの実家だ。
本来なら、イチャイチャを期待してはいけない場所なんだ。
「……やっぱり、そろそろ戻ろっか」
そう言って立ち上がろうとした私の手を、霧島くんが掴んだ。
「待って。あと少しだけ」
「でも……」
すると霧島くんは、突然デニムのポケットから折り畳まれた白い紙を取り出した。
そしてその紙を、私に差し出した。
「これ。今ここで、書いてもらっていいですか」
「え……」
私は恐る恐る彼の手からその紙を受け取り、その紙の内容を確認した。
「え、これ……っ」
そこには既に、霧島くんの名前や住所が綺麗な字で記載されていて、その隣の欄は全て空白になっていた。
「念のため聞くけど、これ何かわかります?」
実際にこの用紙を目にしたのは、初めてだった。
それでも、わからないはずがない。
だって、この紙きれ一枚が、私の夢を叶えてくれるのだから。
最初のコメントを投稿しよう!