幸せはこの手の中に

31/40
567人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
だからといって、あまり長い時間上にいるのも、後から詮索される気がする。 それにここは、霧島くんの実家だ。 本来なら、イチャイチャを期待してはいけない場所なんだ。 「……やっぱり、そろそろ戻ろっか」 そう言って立ち上がろうとした私の手を、霧島くんが掴んだ。 「待って。あと少しだけ」 「でも……」 すると霧島くんは、突然デニムのポケットから折り畳まれた白い紙を取り出した。 そしてその紙を、私に差し出した。 「これ。今ここで、書いてもらっていいですか」 「え……」 私は恐る恐る彼の手からその紙を受け取り、その紙の内容を確認した。 「え、これ……っ」 そこには既に、霧島くんの名前や住所が綺麗な字で記載されていて、その隣の欄は全て空白になっていた。 「念のため聞くけど、これ何かわかります?」 実際にこの用紙を目にしたのは、初めてだった。 それでも、わからないはずがない。 だって、この紙きれ一枚が、私の夢を叶えてくれるのだから。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!