568人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「じゃあ私たち……今日から夫婦になれるの?」
「今から出しに行けば、そういうことになりますね」
「……私、本当に霧島樹になれるんだ……」
この嬉しさを、どう表現すればいいのだろう。
好きなんて、何回伝えてもきっと足りない。
結婚なんて縁がないと、本気で思っていた頃の自分を思い出す。
あの頃は、過去の恋に固執し過ぎて、未来の自分なんて見えていなかった。
見ようともしていなかった。
霧島くんに恋をしていなければ、私は胸に込み上げるこの幸せを、今も知らないまま過ごしていただろう。
「私、これからは霧島さんって呼ばれるのかな」
「職場では永里のままでいいんじゃないですか。結婚しても旧姓のまま働いてる人、結構多いですよね」
「あ、そっか……」
ダメだ、私、浮かれ過ぎている。
頬がずっと緩みっぱなしだ。
「それより樹さん、籍入れたら俺のこと霧島くんって呼ぶの禁止にしますから」
「あ……」
結局、気付けば自然といつもの呼び方で呼んでしまっていた。
最初のコメントを投稿しよう!