幸せはこの手の中に

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「じゃあ私たち……今日から夫婦になれるの?」 「今から出しに行けば、そういうことになりますね」 「……私、本当に霧島樹になれるんだ……」 この嬉しさを、どう表現すればいいのだろう。 好きなんて、何回伝えてもきっと足りない。 結婚なんて縁がないと、本気で思っていた頃の自分を思い出す。 あの頃は、過去の恋に固執し過ぎて、未来の自分なんて見えていなかった。 見ようともしていなかった。 霧島くんに恋をしていなければ、私は胸に込み上げるこの幸せを、今も知らないまま過ごしていただろう。 「私、これからは霧島さんって呼ばれるのかな」 「職場では永里のままでいいんじゃないですか。結婚しても旧姓のまま働いてる人、結構多いですよね」 「あ、そっか……」 ダメだ、私、浮かれ過ぎている。 頬がずっと緩みっぱなしだ。 「それより樹さん、籍入れたら俺のこと霧島くんって呼ぶの禁止にしますから」 「あ……」 結局、気付けば自然といつもの呼び方で呼んでしまっていた。
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