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「リュドラー。その条件は、かなりつらいものなのか」
蒼白になって固まっているリュドラーの反応から、トゥヒムはそう判断した。美しい眉をひそめるトゥヒムを見ながら、リュドラーはサヒサの提案を吟味する。
考え得る最上の扱いだった。
(この俺が性奴隷として働けば、殿下は健やかな日々を送ることが可能になる)
この身を犠牲にすれば、望むものが手に入る。
リュドラーは緊張に喉を鳴らした。覚悟を決めろと自分に言い聞かせる。奉仕している姿をトゥヒムに見られるわけではあるまい。隠しおおせば済むことだ。いずれは知識を得て知られるだろうが、実際の姿を見られなければ……。
「わかった。その条件を呑もう」
サヒサがニンマリとする。
「それでは、いまから約束をしたとおりの扱いをさせてもらおう。――まずは風呂に入り、食事をして今夜はぐっすり眠るといい。すぐに用意をさせるから、しばらくここで待っていたまえ」
ふたりに背を向けたサヒサは、そうそうと言いながら肩越しに振り向いた。
「この屋敷から出ようとは考えないことだ。万が一、素性が知れたらどうなるか……。君たちの生殺与奪権は自分にある。それをしっかりと意識に刻んでおきたまえ」
扉を開けて姿を消したサヒサの声は、ふたりの心に絶望の予感をちらつかせた。
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