自覚

3/6
前へ
/242ページ
次へ
「んっ、う……、うう、う」 「リュドラーは口の中が好きなんだよね」 「んっ、んぅ」  指で舌を挟まれたり、上あごを猫の喉をあやすようにされたりするうち、リュドラーの肌は熱を増し、下肢に血液が集まった。鏡の中でも屈強な男が、しなやかな男に触れられて、股間を硬くさせている。 「ふ、んぅ、う、うう」  ふっとリュドラーの鼻を、なにかの香りがくすぐった。それはどこかで嗅いだことのある、甘い花の香りのようで――。 (これは、蜜酒の匂いか)  部屋に多量に置かれていた蜜酒とおなじ香りが、どこからか漂ってくる。それは肌の熱が上がれば上がるほど強くなり、リュドラーの理性をほどよく溶かした。 「ふふ。あのお酒、もう体に浸み込んでいたんだね」  あれにはやはり、なにか薬品が混ざっていたのかと、リュドラーはティティに目を向けた。 「だめだよ、リュドラー。ちゃんと鏡の自分を見て」  やさしく叱られ、リュドラーは視線を戻した。鏡の中の男は、陰茎の先端を濡らしていた。口内からティティの指が離れる。ティティは小瓶を手に取ってリュドラーの足元に座った。瓶の蓋が開くと、花の香りが強くなる。 「ちゃんと自分を見つめているんだよ、リュドラー」  言われるままに、リュドラーは持ち上がっている尻に小瓶がかたむけられるのを見た。とろみのある液体が尻にかかり、冷たさに身をこわばらせる。 「すぐに、熱くなるから」
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

738人が本棚に入れています
本棚に追加