自覚

5/6
前へ
/242ページ
次へ
「オルゴン」  かすれたリュドラーの声に、ティティが目じりをとろかせる。 「そう、オルゴン。彼はとっても誇り高いんだ。その彼が君を認めたってことは、それだけの素養を君が持っているってことなんだよ、リュドラー」  チュッと軽い音を立ててリュドラーの頬に親愛のキスをしたティティは、ベッドから降りてどこかへ行った。引き出しを開く音を聞きながら、リュドラーは鏡の中の自分を見つめる。 (あれは、俺か――?)  下肢をあさましく奮い立たせ、肌身を熱くしている男は俺なのか。――俺なのだろう。脈打つ陰茎も、ヒクつく秘孔も俺のものだ。触れられていないくせに、淡々とうずいている胸も間違いなく、俺の持っている感覚だ。そうか、これが性奴隷というものか。ティティが自由のないものと言っていた理由は、これなんだな。飼われるもの。いくら愛玩されていても、すべては飼い主の望むままに。その範囲内でなら、好きにできると言いたいのか。  リュドラーの胸に、自分はオルゴンやティティとおなじ境遇なのだという概念が生まれた。 「さあ、リュドラー」  戻ってきたティティの手には、ドアノブに似た真鍮製の道具があった。それは子どもの手の中に入るほどちいさく、裏側は指輪に似た輪がついている。ティティは輪に指を入れて、取っ手と思われた部分をリュドラーの秘孔に埋めた。 「ひっ、ぁ、ああう、う」 「しばらく、こうやって入り口だけを刺激するんだ」 「ふぁ、あっ、ああ」  抜き差しされると、ぬぽ、と濡れた音がした。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

738人が本棚に入れています
本棚に追加