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「抑圧されていたものに気づき、開放されればとまどうのも当然のことだ。なんら恥じることはない。――ああ、さきほどリュドラーを騎士だと言ったことにも怒っているんだったな。それは、性奴隷が体を張って主人を助け、守る存在でもあると言いたかっただけだ。なにも揶揄するために言ったわけではないよ」
反応ができずにいるトゥヒムに、サヒサがワインを飲むよう仕草で示す。
「体を動かした後は、ふたたび頭を働かせるとしよう。さあ、トゥヒム。部屋に戻って勉強の続きだ。リュドラーはこのまま、ゆっくりと休ませてやるとしよう。――ティティ」
うやうやしくティティが頭を下げる。サヒサはワインを飲み干し、先に立って扉に向かった。
「さあ、トゥヒム」
飲む気にはなれなかったが、ワインを一気にあおったトゥヒムは従僕にグラスを渡し、ティティを見た。ちらりと目を上げたティティが唇を舐める。扇情的な表情に腰を震わせたトゥヒムは、彼に渡された紙片の存在を思い出した。
(あれは、なんだったのか)
誰にも悟られずに開かなければならない。トゥヒムは軽くポケットを指先で叩いて、ティティに合図した。ティティは深く頭を下げる。
ティティからリュドラーに視線を移動させてから、トゥヒムはサヒサの後を追って部屋を出た。
残されたティティは肩で息を吐き、手を叩いてたわむれている性奴隷たちの意識を自分に向けた。
「さあ、宴はおしまいだ。それぞれ報酬を受け取って帰るがいい。――リュドラーは、僕の部屋へ」
命じたティティは、リュドラーを抱えた従僕を従えて部屋に戻った。
「後始末は僕がする」
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