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「いい。それほど驚いた、ということだろう? 私も驚いている。自分にこれほどの行動力があるとは思わなかったな」
「……あの、トゥヒム様。なにゆえ、このような時間にいらっしゃったのですか」
うん、とトゥヒムははにかみ、視線を落とした。
「今宵なら、リュドラーのもとへ忍んでも大丈夫だと教えられたんだ」
「誰にです」
「ティティだ」
まばたきをして、リュドラーは眉をひそめた。
「なぜ、ティティがそのようなことをトゥヒム様に申したのです」
「会話をしたわけじゃない。その……、おまえが…………、いや、おまえを私が……、した、時に…………、こっそりとティティから紙片を渡されたんだ」
スリーパーを握りしめて真っ赤になったトゥヒムの姿に、リュドラーの腰のあたりがむずがゆくなった。それを無視して、リュドラーは問いを重ねた。
「その紙片には、なんと書いてあったのです?」
「今宵、フクロウが鳴く刻限に、部屋を忍び出てリュドラーのもとへ行け、と」
「フクロウの鳴く刻限?」
そういえば、夢うつつにフクロウの声を聞いた気がすると、リュドラーは記憶をたどる。
「どういう意味かはわからなかったのだが、習ったことをさらっておこうと本を読んでいたら、フクロウの声が聞こえてな。それで、部屋を出てみたんだ」
「なんと危ないことを……。俺たちがこの屋敷で、どういう立ち位置なのかはトゥヒム様もよくご承知のはず」
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