深夜の訪問

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「ティータイムの時に……、おまえはその……、ずいぶんと乱れていた」 「さぞ見苦しく、不快に思われたことかと」 「いいや、そうじゃない」  トゥヒムは目じりを赤く染めた。ドキドキと心音が高くなる。うつくしいと感じたと言えば、リュドラーに幻滅されるだろうか。それとも、慰めの言葉だと取られるだろうか。 「まったく見苦しくなどなかった。……ただ、気になって」 「なにが、でしょう?」  やはりうつくしくなよやかな男でなければ、性奴隷には向かないと言われるだろうと、リュドラーは予測した。ティティをはじめとした性奴隷の青年たちは、中性的な雰囲気と肢体を持っていた。鍛え抜かれた肉体と日に焼けた褐色の肌をした自分では、とうてい男の欲望を引き出せない。リュドラーはそう考えていた。 (しかし、サヒサは俺にこのようになれと条件を出した。だからトゥヒム様をお守りするために、俺は……)  なによりそれは自分のためでもあるのだと、リュドラーは胸に刻んでいる。トゥヒムを守る以外の生き方など考えられない。そしてティティのベッドで肌を暴かれ、乱れる自分の姿を目の当たりにしたことで、抱かれることへの悦楽が肌身に芽生えていると自覚した。 (それを知られれば、あさましいと嫌悪されるだろうな)  自嘲を口の端に乗せたリュドラーを見て、トゥヒムは自分があざけられたのだと思った。騎士の尊厳を捨ててまで守ろうとしてくれている相手に、この上もなく欲情していると知られれば愛想をつかされるのではないか。 (だが、私は――)  リュドラーを誰にも渡したくはなかった。彼が己のものだと確かめたい。そのために、危険だとわかっていながらここに来たのだ。
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