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向けられた言葉の意味を、リュドラーはすぐには理解できなかった。
「……え」
「聞こえなかったのか」
はにかみ、トゥヒムは繰り返した。
「おまえを、抱きに来たんだ」
じわじわと意識に言葉が浸透し、リュドラーはギョッとした。
「な、なにを申されておられるのですか」
「なにとは、どういうことだ」
「俺を、その……、抱きに来られたというのは、どういったお気持ちというか、なんというか」
「そう、うろたえないでくれ。私も気恥ずかしいんだ」
「は――」
そう言われても、平静でいられるわけがない。リュドラーは落ち着かない心を肉体に力を込めて押しとどめた。かといって、どのような応対をすればいいのかわからない。
「その、リュドラー。とりあえずベッドに座ってくれないか」
「は」
困惑顔のリュドラーに苦笑しながら、トゥヒムは彼の頬を両手で包んだ。
「リュドラー。私はどうも、嫉妬をしているようなんだ」
「嫉妬……、ですか」
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