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うん、と幼い仕草でトゥヒムがうなずく。
(いったい、どういう理由からトゥヒム様は嫉妬をなされているのか)
皆目見当がつかないと、リュドラーはトゥヒムを見上げた。トゥヒムは静かに腰を折り、リュドラーの唇に軽く唇を押し当てる。リュドラーはビクリと震えて硬直し、トゥヒムは眉を下げた。
「嫌だったか」
「いえ。そのようなことは」
「正直に言ってくれ、リュドラー」
「俺のすべてはトゥヒム様のためだけに存在しております。その俺がトゥヒム様を厭うなど、ありえません」
はじめて姿を見たときからずっと、リュドラーはそのことだけを胸に生きてきた。偽りのない瞳に、トゥヒムの唇がほころびる。
「なにもかも、私のためのもの……、か」
トゥヒムは手のひらを頬から首に滑らせて、たくましい肩を掴んだ。
「ここも」
二の腕に触れる。
「ここも」
胸筋を撫でる。
「これも、そうか」
「このリュドラーの毛筋一本すらも、すべてはトゥヒム様のために」
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