指先で確かめて

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 薄暗い官能がトゥヒムを背後から抱きすくめた。唇から熱っぽい息が漏れる。腰のあたりに劣情が渦巻いて、トゥヒムの股間が反応した。 「ならばリュドラー。その隅々まで、私に触れさせてくれ。ベッドに横たわり、ただ私のなすがままになってくれ」 「――トゥヒム様のお望みのままに」  トゥヒムの気配の変化に、リュドラーの肌が粟立った。形容しがたいわななきが肌の下でさざめき走る。それは不思議な高揚をリュドラーにもたらした。胸の先がほんのりとむずがゆくなり、下肢が脈打つ。そんな変化にとまどいながらも、リュドラーはベッドに横たわった。トゥヒムはリュドラーを見下ろし、手を伸ばして薄絹の上から波打つ筋肉を指先でなぞった。 「……っ」  なめらかな指が滑ると、リュドラーの肌はちいさな快楽の炎を灯した。その範囲が広くなるにつれて、リュドラーの分身は頭をもたげる。熱が上がるのと比例して浅くなる呼気を押さえながら、リュドラーは濁りのない目で自分を見下ろすトゥヒムを見ていた。 「これが、すべて……」  自分のものかと、指先で鋼のように力強い肉体を味わいながら、トゥヒムは魅惑されていく。この肉体が雄々しく躍動する姿を、幾度も目の当たりにしてきた。そのすべてが演習という形であったが、獰猛な獣と化すリュドラーは演習という意識を吹き飛ばすほど鮮烈でうつくしかった。 (そう。私はずっと、うつくしいと思い続けていたんだ)  洗練された騎士でありながら、誰も制御のできない崇高なる獣のような、この男を――。  トゥヒムの脳裏に、青年たちに囲まれて乱れるリュドラーの姿が浮かぶ。あれもまたうつくしかった。そして、その美を引き出したものが自分ではないことに嫉妬をし、苛立ちを覚えた。御膳立てされたリュドラーの一部のみしか味わっていないことに歯噛みした。  ムラムラと独占欲が湧き上がり、支配欲が育った。
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