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取り出したリュドラーはふたを開け、匂いを確認した。花の香りがふわりと上がる。これを使えば、部屋の世話をしている人間に妙だと思われるだろうか。しかしトゥヒムの願いを叶えるには、これを使うしかない。
「トゥヒム様」
リュドラーは小瓶をトゥヒムに差し出した。
「こちらをお使いください」
「これは? いい香りだな」
そして嗅いだことのある匂いだと、鼻を近づける。
「それは、なんとご説明さしあげればよろしいのか……。淫靡なマッサージをする折に使用するオイル、とでも申しましょうか。ですので、トゥヒム様が唇をお使いになられて濡らさずとも、それを代用して指でなされれば、俺は…………」
「気持ちよくなれる、ということだな」
羞恥に下唇を噛んで、リュドラーは「はい」とうなった。ふうむと瓶をながめるトゥヒムは、未熟な自分の愛撫ではやはり物足りなかったかと納得する。なにより男の証は急所でもある。そこを不慣れな相手に咥えられ、うっかり噛みちぎられてはと、リュドラーは心配になったのだろう。
遠慮や羞恥からくるものだとは思わずに、トゥヒムはそう納得した。じっくりリュドラーを味わいたいところだが、どのくらい滞在していられるかわからない。
(次にフクロウの声が聞こえたら、部屋に戻らなければならないからな)
ティティから受け取った紙片には、そう注意書きがされていた。
「ならばリュドラー。私はこれを使い、早々に想いを遂げるとしよう」
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