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「なっ」
トゥヒムの唇から漏れた言葉にリュドラーは目を剥いた。
「そんなに驚かないでくれ。――性奴隷への扱いは、相手に心地をしゃべらせるものと聞いた。そのためにはこちらも言うのが筋だと考えたんだ。はしたないと幻滅したか?」
「いえ、すこし……、驚いただけで――」
「すこし、という顔ではないな」
「は――。申し訳ございません」
「あやまらなくていい。……おまえが困惑するのも無理はない。私も自分の変化と発見に驚いているのだからな」
「トゥヒム様」
「だが、悪い意味ではないぞ、リュドラー。むしろ私は楽しんでいる。騎士の尊厳を踏みにじられているおまえにとっては、腹立たしく悔しいことだと思うが……。誰にも抑圧されずに自分の欲と向き合えるのは、とても新鮮で解放された気分なんだ。――すまない、リュドラー」
トゥヒムの言葉にリュドラーはまたたき、クックッと喉を鳴らした。
「どうした、リュドラー」
「――いえ。安堵いたしました」
自分だけが、見知らぬ己の目覚めを体験していたわけではないと知り、リュドラーは安堵した。新たなトゥヒムが己を望んでくれるなら、どのような恥辱も受け入れようと明るくやわらかな感情が湧き起こる。
「安堵? 私がこういう行為を厭い、おまえを嫌うとでも思っていたのか」
「そうではないと、どうぞこの身に刻んでください。トゥヒム様」
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