資質

2/6
前へ
/242ページ
次へ
 ◇  ティティの指がリュドラーの胸肌を滑る。  クスクスと降ってくるティティの笑い声を浴びるリュドラーは、天蓋の鏡に映る自分とティティの背中を見ていた。  ティティの舌が胸に落ち、尖りを含まれたリュドラーがちいさくうめく。ティティは笑みを含ませた息を舌に乗せて、リュドラーの胸乳に甘えた。 「っ、ふ……、は、ぁ」  官能にうわずる自分の顔を見ながら、リュドラーは昨夜の自分はどんな顔をしていたのかと考える。 (トゥヒム様は、いま鏡に映っているような俺の顔をご覧になられたのだろうか) 「心ここにあらず、って感じだね」  ティティの顔に視界を遮られ、リュドラーは視点を鏡からティティの目の中に移した。そこにも自分が映っている。 「昨夜の逢瀬がそんなに楽しかった?」  ティティはいたずら好きの少女みたいに小首をかしげ、リュドラーの鼻先にキスをする。 「……なぜだ」 「うん?」 「トゥヒム様に、紙片を渡したのはなぜだ。いつからそれを計画していた。……おまえになんの得がある」  なにを狙っているのだと目元を険しくしたリュドラーに、ティティは唇を尖らせた。けれど瞳は笑ったままだ。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

738人が本棚に入れています
本棚に追加