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「忘れっぽいね。僕の望みを叶えてもらうって言っただろう? 君の主が君を愛することで、僕の望みは叶うんだ。――ただ、それだけ」
意味が分からないと、リュドラーは眉根を寄せて示した。ティティのしなやかな腕がリュドラーの体に回される。ぴったりと胸を重ねたティティは、リュドラーの首に額を擦りつけた。
「ねえ、リュドラー。性奴隷っていうものは、しょせんは奴隷なんだよ」
「それは、前にも聞いた」
手首をリボンで柱に縛られているリュドラーは、ティティの動きに反応できない。ただ横たわったまま、鏡の中の自分とティティを見つめた。
「こんなに豪華な部屋を与えられていても、どれほど自由に敷地内を動き回れても、……下僕を顎で使えても、奴隷であることには変わりないんだ」
「だから、それは……」
リュドラーの唇をつまんだティティは、泣き出す寸前の目でほほえんだ。
「それが理由だよ、リュドラー」
さっぱりわからない。わからないが、これ以上追及しても納得できる答えは得られないと察したリュドラーは体の力を抜いた。目を閉じて、ティティの言葉を吟味する。
そんなリュドラーを、ティティはじっと見つめた。その顔は寄る辺ない子どもが、すがれるなにかを探すのとおなじ色をしていた。
「……トゥヒム様に害がないなら、それでいい」
「あるはずないよ」
ティティは指先でリュドラーの顎をなぞり、首筋から胸筋の谷をくすぐって脇腹に触れた。
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