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(奴隷とはいえ手厚く扱うという意味か、それとも――)
なにか細工がしてあるのか。
どちらにしても、拒否権はないとリュドラーは蜜酒の瓶を手に取った。
「なにか、入用があったら呼んでくれ。俺はだいたい馬場か馬小屋にいる。どっちにもいなかったら、馬小屋近くの俺の家だ」
「この部屋から勝手に出てもいいというのか」
リュドラーは驚いた。
「馬がうろつくあたりなら勝手に出歩いていいそうだ。このドアを開けたらすぐに馬場に出る。柵がめぐらされているから、そこより外に出なけりゃいい」
「こちらのドアは」
リュドラーは男が入ってきたのとは反対側の、昨夜ここに連れてこられたときにくぐったドアを顎で示した。
「そっちは屋敷の中に通じている。あんたの仕事があるときは、そっちのドアからお呼びがかかるだろうさ。それじゃあ、俺は馬を遊ばせなきゃならないから、失礼するよ」
パタンと扉が閉まり、ひとりになったリュドラーは蜜酒のふたを開けて口に含んだ。
むせかえりそうなほど、甘ったるい花の香りが鼻孔に抜けた。
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