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サヒサはリュドラーを抱きはしないと、ティティは確信していた。だからトゥヒムをリュドラーの部屋に行かせても問題はない。念のためトゥヒムが出かけている間に、自分がサヒサを引きつけておく。サヒサの好みは知りすぎるほどに知っていた。どんなときに自分を抱きたくなるのか、嫌というほど把握している。だからその兆候を感じた日に、トゥヒムをけしかければいい。リュドラーの部屋に行けるぞ、と。
「っ、あ、は……」
ティティの手技にリュドラーが乱れる。高貴で獰猛な獣と称された希代の剣士が、淫靡で妖艶な獣に生まれ変わる。ティティは切り替わる寸前の、理性と本能がせめぎ合うリュドラーの瞳を好んでいた。当のリュドラーは気づいているのだろうか。自分がどれほど嗜虐心をそそる気配を宿しているのか。サヒサはそれを見抜き、だからこそ彼に性奴隷になれという条件を示した。
「んぁ、あっ、ああ……、は、ぁう」
己の思考に没頭しているティティの指に、リュドラーは官能を引き起こされる。事務的に動くティティの指は的確に性感帯を探り当て、じわりじわりとリュドラーを劣情の酩酊へと誘った。理性と切り離された部分がリュドラーの内側に居座っている。それは殺気を感じた瞬間に臨戦態勢に入るのと同等の力を持って、リュドラーの四肢を支配していた。
劣情に対して、考えることを放棄する方法を会得した、と言い換えてもいいかもしれない。
胸をあえがせるリュドラーは、獣欲の化身になっていた。
「ふ、ぅあ、あっ、あ……」
性欲を生きる糧としてきたティティもまた、息をするようにリュドラーを愛撫していた。そこにはなんの感情も介入していない。あるとすればサヒサに対する気持ちだけだった。
ティティはサヒサを意識してリュドラーを乱し、リュドラーはトゥヒムを想って乱される。
どちらも理性の端に深く食い込ませている相手の目に触れる場面を想定していた。
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