甘美な憎悪

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 どれほど求めても自分には表現しきれないもの。それをリュドラーは持っている。ティティはそれを引き出そうと指と舌をうごめかした。乱れるリュドラーの四肢に力が籠り、筋肉が盛り上がる。なすすべなく、されるがままに刺激を甘受する気高い獣を躾けていく。 「ああ、リュドラー」  ティティに呼ばれたリュドラーは、焦点のぼやけた視線を動かした。艶やかな劣情に濁った淫靡な瞳。薄く開いた唇から覗く舌。どちらもが健康的な色合いを奥底に隠している。  ゾクリと体を震わせて、ティティは羨望を瞳に浮かべた。 (僕には出せない)  その時々の趣向に合わせて少女じみた恥じらいを真似してみたり、艶麗な男あしらいのうまい仕草をしてみたりすることはある。どれもサヒサと招いた客を満足させられる出来栄えだと自負していた。けれどリュドラーのこの気色だけは、どうあっても真似できない。リュドラーのこういう気配をサヒサは楽しんでいる。それを見抜き、引き出せる機会を得て喜々としている。まさか彼を自分の手元に残そうなどとは思っていまい。リュドラーはサヒサが抱く気になる肢体ではないから。けれど――。 (僕以外に、あんなに興味を持った目を向けるなんて)  これまでにもサヒサがほかの誰かを抱いたり、新たな性奴隷を飼育することはあった。ティティはすべてをながめ、参加もしていた。どれも自分の立ち位置を脅かすものとは思わなかった。――リュドラーも、決して自分とおなじ位置にはこないだろう。もともとの性質が違うのだから。  そうは思っても得体の知れないざわめきが、ティティの胸底にたゆたっている。  彼の持つ健全な気配が欲しいわけではない。疎んでいるわけでもない。ただ、焦燥に似た奇妙なものがティティの内側にひたひたと押し寄せてくる。 「ふっ、ぅあ、あ、あ……」  花の香りを含ませた潤滑油でリュドラーの尻を探る。この中に入るのは指か道具、トゥヒムだけ。サヒサはここには入らない。そう確信しているのに、ティティは落ち着かなかった。
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