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(だが、それでは俺とトゥヒム様の昨夜をサヒサに知られていることになる)
皮肉めいたほのめかしをされる可能性に、リュドラーの心臓が緊張に硬くなった。自分はどうなってもかまわないが、トゥヒムの心身どちらにも害が及ぶのは避けたい。はたしてサヒサはティティの知らない細工を、この部屋にほどこしているのだろうか。
「ティティ」
「ん?」
まどろんだ声に、リュドラーはためらう。
「なに」
肌からリュドラーのわずかな動揺を感じ取り、ティティは顔を上げた。
「いや。……部屋に、細工がされていないかと」
言いよどんだリュドラーに、ふっと感情のない笑みを浮かべたティティは身を起こした。
「気になるのなら、好きなだけ調べればいいよ。僕の主は部屋の前に誰かを待機させて、監視することすらしないくらい僕を信用してくれているんだ。だから、細工をして部屋の中の様子を探るなんてことはしない。――と説明しても、納得はしないだろうね。なんせ僕は奴隷なんだから」
「……気を悪くさせてしまったか。すまない」
謝罪したリュドラーに、ティティは目を丸くした。なんの作為もなく性奴隷の僕に、騎士であった人が謝るなんて! しかも彼はただの騎士ではないと、ティティは知っていた。館にいる人間の中で、ティティだけはサヒサからトゥヒムとリュドラーの身分を教えられていた。
「ふふっ」
リュドラーの額に笑い声を置いて、ティティは両手を広げた。
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