栗毛の獣

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 食事を終えたリュドラーは室内を見回し、庭に面している扉の傍に、頑丈な革靴が置いてあるのを見つけた。 (本当に、外に出てもいい、ということか)  トゥヒムがいるから、逃げるわけはない。だから自由に外に出てもいいと、頑丈な革靴で示しているのだろう。  立ち上がったリュドラーは屋敷の内側に面している扉の前に立ち、ドアノブをひねった。外側から鍵がかかっているらしく、ガチャガチャと金属が揺れる音がした。  ふっと息を抜いて室内を見回す。  大きな窓には分厚いカーテンがかかっている。隙間から明るい光がこぼれ入り、室内は深夜にランプを灯した程度には明るい。ベッドは庭側を頭にする形で固定されていた。枕元にはちいさなチェストがある。チェストの高さはベッドよりもすこし高いくらいで、その上にはランプとマッチが置かれてあった。  チェストに近づき、しゃがんでながめる。装飾のされていない、木肌そのままの質素なものだ。引き出しは三段。上段を開けると紙とインク、ペンが入っていた。中段は香油らしきものの瓶とタオル。下段はリュドラーが身に着けているのとおなじシャツが三枚入っていた。 (ここで生活する間は、この恰好でいろということか)  サヒサの「淫靡な余興の奴隷」という声が耳に蘇り、リュドラーはゆるく頭を振った。どういうことを求められるのかはわからないが、性奴隷には下着など必要ない、ということだろう。  奴隷がどういうものであるかをリュドラーは知っている。しかし性的奉仕は話に聞くだけで、経験がないどころか見たこともなかった。いったい、なにをどうすればいいのか。――うまくできなければ、トゥヒムの擁護を解かれるのではないか。  一抹の不安がリュドラーの胸によぎる。 (だいたい、男の俺になにをさせるつもりだ)
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