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リュドラーの思惑は当たったらしく、男のひとりが「ここでおとなしくしていろ」と言って、屋敷へ駆けた。
これで屋敷の中に通される。
戻ってきた男に案内されて、リュドラーとトゥヒムは裏口から客間へ通され、しばらく待つよう言い置かれた。
「なあ、リュドラー」
「いかがしましたか、殿下」
「言えない筋で人を連れてきたとは、こういう場合のためにサヒサとひそかに算段をつけていたのか」
リュドラーは年よりも幼く見える曇りのない瞳にほほえんだ。
(この穢れなき魂を、かならず守り抜き天寿を全うさせてみせる)
「まあ、当たらずとも遠からず、と言ったところでしょうか。商人は権力よりも利益に従うもの。――利益があるとなれば、見合った危険も喜んで受け入れるものです」
「では、算段をつけていたわけではなく、商談をするために、ああいう言い方をしたというのか」
「そのとおりです、殿下。この俺の腕を護衛として差し出し、殿下を養育してもらう。――これだけの屋敷を構える男ですから、護衛はいくらいても困りはしないはずですから」
「そのうちの一人が勇猛で知られる騎士リュドラーならば、申し分ない利益となる、というわけか」
「ええ」
「私もなにか、売り込めるものがあればいいのだが」
トゥヒムが眉をひそめ、うつむいた。
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