第一章

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 勿論、腐ったモチを投げ込んだ実行犯は、 見つけ出して顔面に足の跡をくっきりと付けてやった。 蹴った勢いで、草木の生い茂ったなだらかな坂を転がって川に落ちた時の様子には、 少し胸が空いたのを覚えている。  それでも少しだ。 心が落ち着く余裕など無い。 母は一週間、寝込み続けた。 日が経過しても、体調は依然として良くならなかった。 そして七日目にして遂に意識を失った。 その時のことはよく覚えている。 家を通る風が淀むのを感じた。 当時は正直、もう駄目かと思った。
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