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文化祭は滞りなく進んでいた。
あとは後夜祭を残すだけ。
今年は奮発したのか、打ち上げ花火があるらしい。
皆が走って校庭へ向かう中、オレは校内へと向かう。
薄暗がりの階段の踊り場にアイツがいた。
あの日から、オレはアイツを避けていた。
どんな顔をしてアイツに会えばいいのか、分からなかったから。
壁にもたれて座るヤツの隣に、無言で腰を下ろす。
そんなオレをアイツは、優しく抱きしめた。
泣きそうになるのは何故なんだ。
何故、こんなにも幸せで、切なくて、苦しいのか。
二人の吐息も、触れる肌も、繋がる痛みも、この気持ちも、遠くから聞こえる花火の音が、全てを掻き消していった。
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