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「兄貴、久しぶり」
「久しぶりだな」
少し緊張気味の拓人は、自然と顔が強ばっていた。反対に、悠太郎はいつものようにソファーに腰を下ろす。
「色々聞きたいことはあるけど、お前らから全部説明してくれるんだよな?」
「あ、うん。陽向が来てからになるけど」
「え、あいつも呼んでるんだ」
悠太郎と陽向も仲がよい。陽向は本当の兄のように慕っていて、悠太郎もそれが嬉しかった。
その時、インターホンが鳴る。
「どうぞ」
ロックを解除し、玄関へ向かう。
扉を開け待っていると、見ないうちに少し大人びた弟が現れた。
「姉ちゃん、久しぶり」
「久しぶり。入って」
「お邪魔しまーす」
大学生の陽向。今年、就活生だ。
リビングに入った途端、顔がぱあっと輝く。
「二人共来てたんだ!」
どうやら、ここは莉々が一人で住んでいる家だと思っているらしい。
「陽向、髪色戻したんだ」
「そうなんだよ。どう、黒髪。似合う?」
「かっこいいねぇー」
「拓人棒読みすぎ!」
ワチャワチャとしている三人。芸能人が混じっていたとしても、何の変哲もないただのいとこ同士。
一緒に生活するようになって、やっと実感が湧いてきたがまだ慣れない。
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