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目を開けたらそこは何かの会場だった。さっきいた病室とはまるで違い、周りの人はみんな真っ黒な洋服を身に着けている。私もそのひとりだった。 会場の前のほうからお経が聞こえる。それを聞いてああ、誰かが死んだんだなとやっと理解する。誰の葬式だろうか。私は飾られている写真を見に前に出た。 (この人、誰だっけな…) 栗色の髪の男の子がぎこちなく笑っていた。混乱しているせいか、頭がちゃんと回らず、この子が私の知り合いかさえもわからない。なぜ私はここにいるんだろうか。 「かわいそうに…まだ若いのに」 「ほんとよねぇ…」 周りの人は小さな声で話し、すすり泣いていた。 「お母様も、ひとり息子をなくしちゃって…」 「あら、でもあそこの家はそんなに一緒にいるとこ見たことないわよ?」 「仲悪かったのかしら」 そのヒソヒソ声はやけに目立って私の耳に届いた。 ひどく言わないで、とその人たちを睨む。お腹の底がフツフツとして声を喉でグッと抑える。 「黙って!」 一瞬、勝手に声が出たのかと思った。でもそれは後ろから聞こえた声で周りの人も驚いて一斉にそちらを振り返った。
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