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「ちー、」
今までに何度も呼んだ名前。今日まではなんとも思わなかったのに、今はその名前を呼ぶだけで涙が出そうになる。あと1ヶ月の命は何て儚いものなんだろう。
「…何だよ」
さっきまで寝ていたと思っていたのに、茅月がくすぐったそうに笑ってこちらを見ている。
「ちー、手術してよ」
「やだよ」
「なんで、ちー、あと1ヶ月しか…」
茅月は重たそうな体を起こすと私の額に軽い音を立ててキスをした。
「俺は死なねーもん」
その声は微かに震えていた。笑ってるはずなのに、瞳には涙が浮かんでる。
どうして人間はたくさんの大切なものを残して死んじゃうんだろうね。ちーはいくつの大切なものを置いて行くの?
「…俺」
ちーの左手が私の右手に触れた。あたたかい。
「死なないから。ほんと、大丈夫だから」
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