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そこには昨日の検査の結果の話、涙の跡。 滲んだ言葉を指で順々になぞる。ところどころ滲んでいるその言葉たちはひどく重く紙の上に佇んでいた。死が近づいてることへの恐怖や悲しみがじわじわと私にも伝わる。茅月の書いた手紙にぼたぼたと涙を落とした。 (うそつき、いなくならないって言ったのに) 滲んだ言葉の中に"好き"の言葉があった。 『ごめん、八重が好き』 どうして謝るんだろう、その言葉は私に向けられたものじゃないのに"ごめん"だけが私に向けられたもののような気がした。 失恋というものを初めて知った。 私はその白い紙を元の封筒に戻し、机の奥に見えないようにしまった。 さよなら。
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