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「あのさ、やえちゃんは彼氏、いる?」
頭に突然浮かんだ文字を読み上げた。なぜそんなことを聞いてしまったのだろうと後で後悔する。きっとあの手紙の内容がまだ頭の片隅に残ってるんだ。それをかき消す術はまだ見つからない。
「いないよー」
八重ちゃんは少し笑いながら言った。
「好きな人はいるかな」
ぽつんと呟いた言葉に胸の奥がチクチクと痛くなった。耳が熱い。
「どんな人?」
あえて名前は聞かなかった。胸が何かに締め付けられて苦しくなってくる。
「やさしくて、笑う顔がね、すごくいい。あと、しぐさが、好き」
八重ちゃんは公園で遊ぶ子供たちをときどき目で追いながら幸せそうに話す。
「私が知ってる人?」
いつの間にか心臓がものすごい速さで動いてる。八重ちゃんは真っ直ぐ私を見た。
「うん、知ってるよ。いつも一緒にいるから」
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