前編

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 僕も必死で勉強を始めなくてはいけなくなった。今までやったこともない教科書とのにらめっこ。ノートを取る。それってどうやるんだ? そんなことから始めた高校三年生。  余裕なんかからきしなくなった。  たまにタカヒロが誘いに来ても、とげとげしい声で断った。いらいらした。今までは自分が二人にかけてきた言葉なのに。  タカヒロは僕を蔑んだ目で見て、だんだん近寄らなくなっていった。三人、クラスも違う。会おうと思わない限り、そもそも会うことがない。  そう、タカヒロとも、タカヤとも会わなくなっていって。  僕は心にぽっかりと穴が開くのを感じていた。タカヒロが差し出してくれた手を、振りほどいたのは僕だ。なのになんでこんなに悲しいんだ。  中学一年生からの付き合い、三人組み。  その存在は大きすぎた。  勉強なんかより、二人の方が大事に決まっているのに。  僕は、  現在から見出さなくてはいけない、「未来」に囚われた。 *****  ある日あまりに苦しくて、僕はタカヒロの教室に行った。  タカヒロは僕を見て、いったんは無視しようとした。だけど考え直したように僕の方へやってきて、 「よう。どうだ? 勉強の方は」  と話しかけてくれた。  その瞬間、僕は解放されたような気分になった。 「ああ、ほどほどに」  そう答えると、「そうか」とタカヒロはにやりと笑った。タカヒロの笑い方の癖だ。     
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