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しかし、突然それは起こった。
ある朝、母が朝食をお盆に乗せ二階に行った直後、二階から悲鳴が聞こえた。
僕と父が慌てて二階に上がると、兄の部屋のドアが開いていて、そこを覗くと錯乱した母が床にへ垂れこんでいた。
母は泣きじゃくりながら、窓の方を指差した。
そこいたのは、カーテンレールにロープをかけ首を吊っている兄の姿だった。
全身の力が抜け、手足は力なくダラリと垂れ下がっていたが、兄の目はこちらを向いていた。
まるで僕らを恨んでいるかのように……。
アンモニアのニオイが、微かに鼻についた。
久しぶりに見た兄の姿は、少し太っていた。
当たり前か。
ほとんど家にいて、食べては寝るの繰り返しなのだから。
母に暴力まで振って……。
だが、ふと兄の顔に違和感があった。
僕はゆっくりと近づき、兄の顔をのぞく。
兄の顔は、何故かとても腫れ上がっていて、青痣が方々に出来ている。
腕には、掴まれたような跡があった。
「きゅ、救急車だ!早く呼ばないと!! それから警察も!!」
振り返ると、父は慌てて部屋を出ようとしていた。
「待って!! やめて!!」
母がそれを止めた。
「お兄ちゃんを連れて行かれちゃうじゃない!」
「何を言ってるんだ。お前は!」
「お兄ちゃんは、外に出たくないのよ? 私達が守ってあげないとダメなの! 大丈夫よ。きっと、私達を驚かせようとしているだけ。ね、そうでしょ?」
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