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ある日、食事を二階に運ぼうとする母に、父は言った。
「いい加減、甘やかすのはやめろ。何もしない人間に食わせる飯などない」
「何を言ってるの。そんな事したら、お兄ちゃんが可哀そうでしょう」
そう笑って、階段を上って行く母を、父は呆れ気味に見ていた。
ところで、しばらくして二階から物音が聞こえた。
何かを落としたような、ドスンという音だった。
僕と父が心配になり廊下に出ると、二階から母が下りてきた。
口元を隠すように両手を重ねていたが、その手には血がついていた。
「怪我したの?母さん!!」
「あいつがやったのか?!」
矢継ぎ早に問う僕と父に、母は「違うの、違うの。お兄ちゃんは悪くないの」と手を擦りながら言った。
父は激怒し、兄の部屋に乗り込もうとしたのだが、母がそれを止めた。
「やめて!!あの子は特別なの。今はちょっと反抗期、そう反抗期なの。ほら、あの子にはなかったじゃない。しばらくしたら、また前のようにいい子になって、私達を安心させてくれるわ」
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