第2話  一家にひとり アリシアさん

1/6
前へ
/66ページ
次へ

第2話  一家にひとり アリシアさん

「よぅアリシア、今日も元気だな!」 「あ、どうもー。今日もなんとか、えへへー」 「アリシアちゃん、今度うちの息子とお見合いしてくんない?」 「アハハ。まだ結婚とかちょっとー」 「アリシア、これ今度の新作なんだけど、旨いから食ってみてくれよ」 「くれるんですか? ありがとうございますー!」 バタン! 扉を潜る。 そうして辿り着いたのは、愛すべき我が職場。 今日も人っ子ひとり居やしません。 この静寂がなんとも有り難いです。 「だぁあ~~疲れた。なんで道を歩くだけでアチコチから声かけられるんですかっ」 あの事件を解決してからというものの、何かと私を持て囃すのです。 出勤するだけでこの有り様ですから、おちおち道も歩けませんよ。 「何というか、私は本棚の後ろに隠れる虫のように生きていたいんです。なのに、どうしてこんな目に……」 こんな日は仕事を切り上げて、心の旅に励むこととします。 そして帰宅したら、部屋の隅っこで再度妄想の世界へ堕ちるのです。 そうやって心身の疲れを癒しましょう。 妄想は私を苦しめますが、同時に良きパートナーでもあるんですから。 でも、人生とは常に五里霧中。 予想外の出来事ってのは突然やってきます。     
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

145人が本棚に入れています
本棚に追加