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第2話 一家にひとり アリシアさん
「よぅアリシア、今日も元気だな!」
「あ、どうもー。今日もなんとか、えへへー」
「アリシアちゃん、今度うちの息子とお見合いしてくんない?」
「アハハ。まだ結婚とかちょっとー」
「アリシア、これ今度の新作なんだけど、旨いから食ってみてくれよ」
「くれるんですか? ありがとうございますー!」
バタン!
扉を潜る。
そうして辿り着いたのは、愛すべき我が職場。
今日も人っ子ひとり居やしません。
この静寂がなんとも有り難いです。
「だぁあ~~疲れた。なんで道を歩くだけでアチコチから声かけられるんですかっ」
あの事件を解決してからというものの、何かと私を持て囃すのです。
出勤するだけでこの有り様ですから、おちおち道も歩けませんよ。
「何というか、私は本棚の後ろに隠れる虫のように生きていたいんです。なのに、どうしてこんな目に……」
こんな日は仕事を切り上げて、心の旅に励むこととします。
そして帰宅したら、部屋の隅っこで再度妄想の世界へ堕ちるのです。
そうやって心身の疲れを癒しましょう。
妄想は私を苦しめますが、同時に良きパートナーでもあるんですから。
でも、人生とは常に五里霧中。
予想外の出来事ってのは突然やってきます。
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