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ーーお姉さん、僕とお話ができるの?
「妾をなんと心得る。108の魔術を使いこなす『宵闇の美魔女』とは妾のことよ」
ーーえ、そんな通り名聞いたこと無い……
「ふむ、今夜は肉の気分じゃ。兎肉にするとしよう、覚悟せい」
ーーごめんなさい殺さないで宵闇さま!
それからしばらく話し込み、瘴気の森に人間の子供がいることを突き止めた。
全く、これだけの事に時間をかけすぎじゃ、グズめ。
ウサギの案内に続くと、確かに瘴気の森の中で少年が倒れている。
行方不明の坊主と見て間違いあるまい。
ーー魔女様、そのニンゲンはもう助からないよ。体に斑点が出てる。悪い気を吸いすぎたんだ。
「凡愚め、すぐに諦めるのは愚者の悪癖よ。見ておれ」
ーー何をする気なの?
「そこに生えていた草から汁を絞り出し、あっちに生えていたキノコを細かく刻み、それらを混ぜたものをしばし陽に当てる。最後に布でくるめば完成じゃ」
ーー完成って何が?
「察しの悪いヤツよ。特効薬に決まっておろうが。これを口にあてがっておれば、毒なんぞ瞬く間に中和できよう」
処置を施してから背負い、急ぎ森から出た。
薬のおかげで体からは斑点が消えて意識も戻り、やがて歩けるようになった。
妾の手にかかれば当然の結果じゃな。
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