第1話  妄想が健やかに あなたを救う

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『泣かないで。その美しい瞳で見送ってくれないか? それだけで100万の味方を得たような気になるんだ』 『ああ、あなたのために泣きたいのに。それすら許してくださらないのね』 『夢に生きてしまう私のことを、許してほしい。きっと、秘宝を持ち帰ってみせるから』 『どうか、ご無事で。それだけをただ祈り続けています……』  ◆ 「あのう?」 「ヒャイ!」 今すっごい変な声出た! びっくりしたぁ、急に話しかけないでくださいよ。 え? ずっと声をかけてました? 依頼の報告に来たんですか……すいません。 「それから、僕はドラゴン退治なんか行きませんよ? そもそも野草刈りから帰ってきたとこですし」 「ハイスミマセン……」 あの妄想が全部漏れてただなんて、死にたくなりますよ! ともかく平謝り。 死んだ魚のような目をして陳謝です。 ーーバタン。 イケメンさんがお帰りです。 彼の苦笑いを忘れることは無いでしょう、たぶん。 恥の余り職を辞して引きこもりたいですが、あいにく我が家にそんな余裕はありません。 なので傷心に構うことなくカウンターに座り続けるのです。 「あぁ、貧乏とは辛いもんです。貴族の箱入り娘として生まれたかったですよ……」 ど平民の私には無縁の世界。 働かずに済む暮らしなんて、死ぬまで望めそうにありません。     
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