第1話  妄想が健やかに あなたを救う

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だからせめて心の中だけでも、と思ってしまうのです。  ◆ 『アリシアお嬢様、お茶にございます』 『なぁに、またその銘柄? それ好きじゃないわ』 『これはとんだ失礼を……。すぐに替えをお持ち致します』 『ふふ、冗談よ。せっかく淹れてくれたのだもの。それをいただくわ』 『お嬢様のご温情。この老体にはもったいのう御座います』 『それはそうと、今度の晩餐会だけど』 『先ほど仕立て屋より新しいドレスが届けられております。ご覧になられますか?』  ◆ 「いいわね、持ってきてちょうだい。お父様に見せてビックリさせましょう!」 「おうアリシア。今日も絶好調だな!」 「……ゲフゥ」 目の前で筋肉が人語を喋りました。 天井の方へググッと頭を向けると、ようやくご尊顔を拝めます。 彼は私の上司兼、店舗責任者のギルドマスター。 いわゆる雇い主ってやつです。 「暇だから無理もねぇが、あんまりボヤッとするなよ? 腹の中が腐っちまうからな」 「そうですね。魂だけじゃなくお腹の中もってなると、修正が効きませんから」 「魂? 何の話だ?」 「こっちの話です」 今日は厄日なんでしょうか。 いつもならここまでヘマしないのに、本当に。 「オレはこれから会合にでるから、しばらく受付頼むわ」 「はい、いってらっしゃいです」     
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