第1話  妄想が健やかに あなたを救う

5/8
前へ
/66ページ
次へ
「この辺にお尋ね者が潜伏してるらしいぞ。安全には気をつけておけ」 「イエス、マスター!」 ビッと敬礼で返しました。 ただでさえアレな子と思われてるんですから、せめて返事くらい良くしないと。 路頭に迷ったら一大事ですからね。 「さてさて。邪魔者も居なくなったし、妄想に耽りますかね。ウェッヘッヘ」 私を辱しめたり足を引っ張ったりする妄想癖ですが、同時に日々の彩りでもあるのです。 仕事もせずに心の旅をしてお給金が貰えるだなんて、たまんねぇぜ。 机に両腕を敷いて頭を寝かせて準備万端。 後は気持ちが堕ちていくのを待つばかり。 「今度はどうしよう。100人の王子さまに言い寄られて、99人をふる話とか……」 その時です。 入り口のドアがドカッと勢いよく開かれ、さらにバァンと閉じられました。 私はね、もうビクーンですよ。 急ぎの用にしても、もう少しマナーを弁えて欲しいもんです。 「あのぅ、何かご依頼ですか?」 「はぁ、はぁ」 「……えっと。それとも報告ですか?」 「はぁ、はぁ」 ジャキンと剣が抜かれました。 白刃さんこんにちわ! でもこんな所で抜剣だなんてご法度ですから! 「おとなしくしろ、騒ぐんじゃねえ!」 あぁーーヤバい人だったー! なんで今日はこうも不運ばかり続くんですか!     
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

145人が本棚に入れています
本棚に追加